イスムのスタンダードシリーズ 2019年初の新造型作品。
モデルは奈良県の国宝 木造観世音菩薩立像。百済観音の名で知られるスレンダーな観音像です。腰高ですらりとした八頭身の美しいプロポーションは、まるで宙に浮いているかのような軽やかさ。横からの拝観をも想定した直線的な体躯にやわらかな曲線の天衣をまとわせる造形表現も極めて優美です。
百済観音は7世紀半ば頃の飛鳥時代に制作されたと見られる木彫像ですが、その多くが厳粛な雰囲気を持つ飛鳥仏においては異彩とも言えるやさしい表情をしており、小さな目や口は楚々とした印象を与えます。
これほど立派な大作でありながらその伝来は謎に包まれており、広く知られるようになってからは「せいたか観音」、「酒買い観音」などの愛称で親しまれるようになりました。
制作上もっとも難しく、もっともこだわったのは、そのアルカイックな表情。わずかに口角を上げ遠くを見つめる尊顔には、やさしさの中にも強い意志を感じさせます。幾度にもわたる原型修正を繰り返した結果、見る角度によって様ざまなニュアンスをもたらす絶妙な表情の再現に到達。また百済観音の大きな魅力のひとつでもある彩色の経年変化も、顔料を幾重にも重ねることで忠実に再現しています。
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